2023/09/20 12:36


2021年思い立って制作を始めたソロアルバム。やっと2022/6/11大安吉日リリースすることができました。だいたいこんな地味でマニアなCD、身内のハワイアン好きしか買ってくれないよなー、ってことでライナーノーツもごくごくシンプル(だけど全曲使用チューニング掲載w)。でもある方から「ハワイ音楽やスラックキーよく知らないし、解説とかあるといいな」と言われ、ハッとしました。そうだよね、ハワイマニアは周りでいつも接している人たちだけで、知らない人の方が多いんだよなって。

ってことで、1曲ずつ解説、というか紹介文を書いて行こうかなと思いつきました。まず今日は、なんでこのタイトルってことから始めたいと思います。長文御免。


ハワイ語Kī Hoʻaluキーホアルは英語だとSlack Key スラックキー、緩めたキー。1800年代メキシカンカウボーイがハワイにギターを持ち込んで以降、ハワイのローカル達はギターを独自に様々に調弦して、それぞれのファミリーのスタイルで伝承されてきたと言われています。チューニングはいまでこそオープンになってるけど、1960年代まではそれぞれのプレイヤーでシークレットで、なかなか他人には教えてくれなかったらしい。そんなスラックキーギター、なんともいえない豊かな響き、そしてチューニングによって色々な響きがあって、さらにはそれらが混ざり合ったハーモニーはほんとに心地よい。ありきたりな表現だけど、まさに南の島の爽やかな風や甘い花の香りを感じさせてくれます。

そして、Kīka Kila キーカキラはSteel Guitar のこと。弦の上で鉄などのバーを滑らせて弾く楽器。いまでこそ米国メインランドのカントリー音楽での使用が主流になってるけど、これも元々ハワイでの発明品。やはり19世紀の終わり頃、オアフ島のJoseph Kekuku ジョゼフ・ケククという人が、偶然、ギターの弦の上に落ちた鉄のボルトが鳴らした音を聞き、ハッと閃き、それからはギターを膝の上に寝かせて弦の上をポケットナイフや櫛を滑らせる奏法を開発した、というのが定説になっています。(諸説あります。)ブルース〜ロックでよく使われるスライドギターも、1915年パナマ・パシフィック万博でハワイのミュージシャンが繰り広げたショウを観た黒人のブルースギタリストが、真似をして始めたって言われています。(これまた諸説あり。)1920年代、30年代から、それこそ世界を席巻したスティールギター。そのユニークなサウンドは多くの人の耳を掴み、ここ日本でも昭和の時代に大流行しています。それが今や見る影もなく、ひっそりと知る人ぞ知る存在だったスラックキーギターのほうがむしろポピュラーなような状態。流行り過ぎは良くないですね笑。

そんなスラックキーギターとスティールギター。これらをアンサンブルの中心に据えて新たな世界を拓いたのは、何と言っても60年代、70年代のSons of Hawaii Gabby Pahinui ギャビー パピヌイのスラックキーギターにDavid “Feet” Rogers デイヴィッド “フィート” ロジャースのスティールギター。レジェンドとして、今でもハワイのローカル達の尊敬を集めています。特にFolk Music of Hawaii というアルバム、通称Five Facesは、Da Kine Music の金字塔として、ジャンルレス、ボーダーレスに聴かれるべき大名盤だと思います。

さらに、スラックキーとスティールギターをフューチャーした名盤が、Maile Serenaders というスタジオ録音セッショングループの、Kani Ka Pila Vol.1&2

LPではクレジットが無くて判り難いのですが、Vol.1にはDavid “Feet “ Rogers が、Vol.2にはGabby Pahinui がそれぞれスティールギタリストとしてフューチャーされています。このアルバムこそが、今回の僕のCDの焦点の一つなんです。


ここまで長くなってしまったので、続きは、次回以降に。